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190.  オコメのクニのヒト

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ホスピタレイロの男性は無口で物静かな人だった。
真面目でちょっと頑固そうにも思えた。


彼もペリグリーノの世話をしっかりしていた。

まず、私の荷物を見て「大きすぎる」といい、ご丁寧に重さを計り、私の体重を聞いた。
そのときの私の体重に対する適切な荷物の重さは7kgだった。
しかし、私は13kgの荷物をかついでいた。

女性は大きなふたつきのカゴを指さし、他の人が使ってもいい不用品はこの中に入れるようにアドバイスをしてくれた。
あとから来るペリグリーノが使うかもしれないから、ということだった。




それから私のぬくぬく下着のことにもふれた。
私はとても寒がりだ。
そして異国で風邪をひき体調を崩すのをひどく怖れた。

言葉も通じないところでの体調不良なんて、想像するだけでむちゃくちゃ不安になる。

しかし彼女は言った。

「これから先は暖かいエリアになる。そこまでの防寒は必要ない。これがとても大切なものなら、日本に送るように夫がうまいことしてくれるだろう」

私は悩みに悩み、そして実際に荷物が重いことにもくたびれていた。


ので、「いるかもしれない」と思った手ぬぐいをカゴに入れ、ぬくぬく下着の上下(シャツとスパッツ)を男性に預けた。





夕食前にアルベルゲのそばの教会の中を他のペリグリーノと見学した。




こぢんまりして、丁寧に手入れをされ守られていると感じた。






料理は男性が作るのだとホスピタレイロは言った。
作るのが好きなんだそうだ。
数名が手伝いを申し出たが、女性は「どうかしらね」と言った。

「彼は自分のキッチンに人が入るのをあまり好まないのよ」





幾つかの大皿に料理が並び、ホスピタレイロとペリグリーノは同じテーブルについて夕食を食べた。

彼らの会話は早すぎたり、単語がわからなかったりして、やはり私は孤独だった。


私の席に一番近いところにおコメと野菜のサラダがあったので、最初にそれをお皿に取った。
すると女性が言った。

「やっぱり彼女は日本人だわ。最初にライスを取ったから」


私はげんなりし、軽く失望した。


こういう思い込みや先入観はあちこちであるな、と思った。
そして気をつけよう、とも思った。