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188. ある決断。しかしそれは



考え事がしたくて、またプエンテ・ラ・レイナに戻る。
今度は橋に大接近する。
遠くから見た橋は美しかったが、近くで見るとどっしりと頑丈そうだ。



カミーノにはいくつものルートがある。
私が歩いていたのは「フランス人の道」で、かつてナポレオン三世がスペインに乗り込んだときのピレネー山脈越えのルートだ。
そしてハカなどを通る「アラゴンの道」とはここ、プエンテ・ラ・レイナで合流し、西へと進む。



マリが言っていた。「天国のようなアルベルゲがある、って聞いた」

それはここから「アラゴンの道」へと戻る。

どうも私は心の余裕がなさすぎて、ぎすぎすしてしまうことが多い。
切り詰めるときには時間もお金も体験もぎりぎりまで切り詰めてしまう。必要がないときまでも。

そんな自分がいやだった。今でもいやだが、少しは遊べるようになっている。あくまでも「当社比」だけど。

ようは人生煮詰まってカミーノを歩いていたのだ。
自分を変えたい。
本当の自分を見つけたい。


先を急ぐ気持ちもあるが、自由に寄り道をするマリをうらやましく思う。

彼女はアルベルゲに大きなバックパックを置くと、街を歩くときに適当なバッグがないから、と長袖シャツを器用に結んで肩掛け布バッグを作っていた。

そんな彼女は自分で道を決め、自分でそのときやりたいことを計算なんてせずにどんどんやっていっているように見えた。

マリはそのアルベルゲに行く。と出発していた。

さて私はどうする。





街に戻る前、橋のたもとで私はひどい顔をしてセルフタイマーで自撮りをしている。
自分としては「決意の顔」。




大きなコウノトリの巣。