2023/09/05
このとき一緒にいた人は言った。
「自分はゴールまで一度行ったことがある。
ブルゴスからアストルガまで歩いていなかったので、このたび歩いた。
自分の今回の目的は果たした。
このままアストルガからサンティアゴ・デ・コンポステーラまで電車で行くつもりだった。
しかし君が望むのなら、すでに歩いた道だけど、一緒に歩いてもいいと思う」
その人は私のカミーノと意思を尊重してくれた。
私は時間を十分もらっていた。
が、答えは最初から決まっていた。
「一人で歩く」
そう告げたとき、その人はがっかりした様子だった。
しかし私は誰かと一緒にしゃべりながら歩いていると、楽しいけれど、回りの景色は一向に自分の目には見えてこず、考えることもしなくなったのを感じている。
そしてここまで来た意味を自分で考える。
孤独で、人との関わりに飢えていた。
一番信頼したい人とはうまくいっていなかった。
日本はどんどん遠くなって、ここから帰る手段は到底考えつかなかった。
それでも「ソロで歩く」ことしか選択できなかった。
この日、ホテルで朝食を食べると駅へ下見に行った。
翌日その人が乗る列車の出発時刻の確認である。
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