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374. 別れの準備

 








2023/09/05

このとき一緒にいた人は言った。

「自分はゴールまで一度行ったことがある。

ブルゴスからアストルガまで歩いていなかったので、このたび歩いた。

自分の今回の目的は果たした。

このままアストルガからサンティアゴ・デ・コンポステーラまで電車で行くつもりだった。

しかし君が望むのなら、すでに歩いた道だけど、一緒に歩いてもいいと思う」


その人は私のカミーノと意思を尊重してくれた。

私は時間を十分もらっていた。

が、答えは最初から決まっていた。


「一人で歩く」

そう告げたとき、その人はがっかりした様子だった。


しかし私は誰かと一緒にしゃべりながら歩いていると、楽しいけれど、回りの景色は一向に自分の目には見えてこず、考えることもしなくなったのを感じている。

そしてここまで来た意味を自分で考える。


孤独で、人との関わりに飢えていた。

一番信頼したい人とはうまくいっていなかった。

日本はどんどん遠くなって、ここから帰る手段は到底考えつかなかった。

それでも「ソロで歩く」ことしか選択できなかった。


この日、ホテルで朝食を食べると駅へ下見に行った。

翌日その人が乗る列車の出発時刻の確認である。